職務等級制度と職能資格制度という言葉は、いずれも企業による賃金査定の方法の一種で、言葉は似ていますが両者には正反対ともいえる大きな違いがあります。
日本では、多くの企業が職能資格制度を用いていました。これは基本的に年功序列で、勤続年数が長くなればその従業員の能力も上がるという考えを元にしています。
同じ企業で長く働くモチベーションにつながる一方、勤続年数が浅い従業員から「同じ仕事をしているのに自分のほうが賃金が低い」という不満が出たり、逆に賃金の高い従業員でも期待に沿う結果を出さない場合があるなどのデメリットもあります。
対して、職務等級制度は、勤続年数は関係なく、仕事の成果のみを対象にして査定を行います。大企業では2020年4月から導入し、次第に中小企業にも広がった同一労働同一賃金の導入により注目度が上がりました。
この方法には、職務記述書が必要になります。職種別の成果やスキルの評価基準を細かく示したもので、厚生労働省が作成したひな形をもとに、各企業がカスタマイズして作成します。勤続年数や職務履歴を査定する項目はなく、すべてが仕事の重要度、成果に対する項目になっています。
職務記述書の基準に見合った従業員には好ましい制度ですので、企業はある分野のスペシャリストを獲得しやすい利点があります。「同じ仕事をしているのに・・・」という不満も出ません。
逆に、長く勤務するメリットが薄いため定着率が低くなる、評価が上がらない仕事に力を入れなくなる、そもそも制度の導入が面倒というデメリットも見られます。